モト
正式名称はモート。
『ウガリット神話』において「死」と「不毛」を司る神であり、「冥界」を統べる王。
※ウガリットは現在の「シリア・アラブ共和国」西部の都市「ラス・シャムラ」にあった古代都市国家。
紀元前1450年頃~紀元前1200年頃にかけて存在したとされる。
最高神・エルが父、女神・アシェラトが母。
兄妹には『ウガリット神話』の主神・バアル、海神・ヤム、愛と戦いの女神・アナトがいる。
「死」によって生命に安らぎを与える神であると考えられており、「熱風」と「猛暑」によって「植物」や「大地」を干上がらせ、「作物が実らない大地」に次の「生命」を養えるだけの力を授ける「植物神」としても崇拝されていた。
また、「乾季(1年のうちで、雨の少ない季節)」を象徴する神であり、自然に恵みをもたらす「雨季」の象徴である豊穣神・バアルとは肉親でありながら相容れない「宿敵」。
その肉体は「冥界」そのものであり、口は天から地までの間を覆うほど大きいとされ、この世のどんなものでもその口から逃れる事はできないという。
さらに死んでも復活する不死身であり、主神であるバアルですら永久に消滅させることはできない。
バアルとの闘い
自らを認めず、驕り高ぶったバアルと反発していたモト。
そこでモトはバアルを陰謀に陥れ、巨大な口で飲み込んで「冥界」へと縛り付けた。
すると瞬く間に雨が降らなくなり、大地は干上がって植物は育たなくなってしまった。
その異変に気付いたバアルの妻・アナト(モトの妹でもある)は、バアルの身柄を返すよう求めてきたため正直にバアルを飲み込んだことを話す。
しかしその事実を知ったアナトの様子は豹変し、モトの体を粉微塵に切り刻み、最終的に大地に撒かれるといった「壮絶な復讐」を果たされる。
アナトの勝利によってバアルは「冥界」から地上へと戻れたが、その七年後にはモトも甦ると再びバアルに戦いを挑むことに。
そこで両者は激しく争いあうが、勝負の決着はつかず相討ちに終わる。
やがてその「不毛な争い」を見たモトの妻である太陽の女神・シャプシュは、夫に無駄な争いをやめるよう訴えた。
モトは妻の訴えを受け入れ、ようやくバアルが神々の王であることを認めてその「王権」を譲ったという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生デビルサマナー(1995年)』。
基本的に種族は”死神”であるが、”魔王”の場合もある。
登場する種族においては”最高レベルの悪魔”であることが多い。
シリーズには頻繁に登場し、主に「万能属性」と「呪殺スキル」を所持した魔法悪魔として活躍する。
『真・女神転生Ⅲ(2003年)』では、終盤のボスとして登場。
行動回数を増加させる「獣の眼光」を使用した後、「マカカジャ」で攻撃力を上げて「メギドラオン」を連発し、プレイヤーを一方的に虐殺してくる通称”モト劇場”として有名。
モトの関連動画
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
タナトス
タナトスは『ギリシア(ギリシャ)神話』に登場する冥界の王・ハデスに従う死神。
夜の神・ニュクスの息子。
眠りの神・ヒュプノスとは双子の兄弟で、”兄”にあたる。
ヒュプノスが「生者」に永遠の眠りを与え、「眠った生者の魂」をタナトスが抜き取って「冥界の住民」とするのが役目。
ただし「英雄」を運ぶのは”オリュンポス十二神”の一柱であるヘルメスが担当しており、タナトスが運ぶのは「凡人」と「罪人」のみである。
(「英雄」は星座にして記録するため、「冥界」に連れていかれることはない。)
柔和で優しいヒュプノスに対してタナトスは「鉄の心臓」と「青銅の心」を持つ非情な神とされており、人間にとっても神々にとっても忌むべき者とされる。
『ギリシア(ギリシャ)神話』においては英雄や神々によって死んだ者の魂を運ぶ際に邪魔されることが多く、ギリシア(ギリシャ)悲劇『アルケスティス』が有名。
悲劇『アルケスティス』
内容を簡単に言うと
・死期が迫った人間の王・アドメトスが太陽神・アポロの好意によって誰か身代わりを出せば命が助かることとなる。
・なんやかんやあって最終的に妻であるアルケスティスが身代わりとなって死ぬ。
・そこでタナトスが魂を運ぼうとするが、英雄・ヘラクレスが邪魔して彼女を救い出すというもの。
女神転生シリーズにおいて
『真・女神転生 デビルサマナー(1995年)』で初登場。
『ペルソナ3』では主人公の固有ぺルソナとして登場する。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
オルクス
オルクスは「古代ローマ(紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろ)」に信仰されていた”死”をもたらす神。
「誓いを破った者」や「悪人」を死後に苦しめる神で、おもに農村部で崇拝された。
名前には「冥府」そのものを指す呼び名としても使われており、プルートゥと同一視されていくようになったという。
※プルートゥは『ギリシア(ギリシャ)神話』の冥界神・ハデスが『ローマ神話』に取り入れられた神。
神話の内容がほぼ一緒で、同じく冥界神。
他にも敵兵を殺害しては貪り食うといわれている豚顔の邪神・オーカスがいるのだが、これはオルクスが零落(れいらく※衰退したり、落ちぶれること)した姿だとされている。
その姿は「髭を生やした巨大で恐ろしい男」として、「古代ローマ」の壁画などに描かれていた。
ちなみにイタリアの町「ボマルツォ」で有名な怪物庭園「地獄の口」は、オルクスを表しているとされている。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生 STRANGE JOURNEY(2017年)』。
魔王オーカスの真の姿であったと思わせる設定で登場し、 オーカスとヘルによる特殊合体で仲魔にすることができる。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
イシュタム
イシュタムは『マヤ神話』における”自殺”を司る神で、選ばれた人間の魂を「楽園」に導くとされている。
※「マヤ」とはメキシコの南東部でかつて栄えた文明。
紀元前1000年に誕生してから16世紀頃までの約2500年以上栄えたとされ、南北アメリカ大陸で最も発展した文明の1つ。
その姿は両目を閉じ、顔面が腐敗した首を吊った女性として『ドレスデン絵文書(13世紀から14世紀のものとされるマヤの書物)』で描かれている。
誰でも「楽園」に連れて行くわけではなく、「聖職者」に「いけにえの犠牲者」や「戦死者」、そして「首つりをした者」のみを「楽園」へと導くという。
楽園は「ヤシュチェ」という「宇宙樹(うちゅうじゅ)」の木陰にある心地良い場所であるとされ、「極上の食べ物」と「飲み物」を堪能でき、人々はあらゆる苦しみから解放されて暮らすとされる。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生 デビルサマナー(1995年)』。
種族”死神”として登場。
実は『ドレスデン絵文書』で描かれた首つり状態のイラストも存在したが、自主規制によりボツ。
現在の長髪で顔を隠し、手に首吊りのロープを持った女性のデザインになったという。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ゲーデ
ゲーデは「ブードゥー教」における”死”と”性”を司る精霊。
「生物」を養って増やしたり、「死者」を生き返らせるとされる。
※「ブードゥー教」はカリブ海の島国「ハイチ」で主に信仰されている「民間信仰」。
「ハイチ」の推定人口は1,140万人程度とされるが、国民の約2人に1人が「ブードゥー教」を信仰しているほど浸透している。
「ブードゥー教」において「死んだ人間」は神々の住む土地「ギネー」に行くための長い道を「魂」となって進むとされ、その途中にある「永遠の交差点」でゲーデは「魂」たちを見張っているという。
その姿は、破れた「黒い山高帽(やまたかぼう)」とボロボロの「黒い燕尾服(えんびふく)」を身に着けた男性。
性格は非常に陽気で、「生きてきた全ての人間」の誰よりも賢いとされるが、ひどく「下品な態度」や「言葉遣い」で話す。ちなみに大好物は「葉巻」と「酒」。
さらに「生きた人間」に憑依しては「当人」やその「知人」の秘密を暴露させ、慌てる姿を「娯楽」とする厄介な一面をもつ。
そんなゲーデだが、「ブードゥー信者」にとっては「死者」を守護するものとして大変信仰されており、「ブードゥー信者」の墓石にはゲーデに関する名が数多く刻まれている。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1997年)』
ソウルハッカーズでは「陽気」な性格ではなく、紳士的。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ケルヌンノス
ケルヌンノスは『ケルト神話』の”狩猟”と”動物”の神であり、死神ともされる冥府神。
※「ケルト」は紀元前5世紀~紀元前1世紀までに「ヨーロッパ」の広範囲に居住していた民族のこと。
国名ではない。
その姿は頭に「二本の牡鹿(オジカ)の角(牛の角とも)」が生え、「人間の胴体」でありながら「蛇の足」を持った姿だという。
また「牡鹿(オジカ)」や「牛」、さらには「犬」と「ドブネズミ」といった動物を従えているという。
謎多き神
ケルヌンノスはまとまった神話的エピソードが残存していない謎多き神で、「死神」としては”死後の世界を支配する者”や”生と死の間にある扉を導き開く者”であるとされた。
また、「動物の神」とされているのはケルヌンノスが発見された「祭壇」や「骨董品」に描かれる際、常に動物と共にいたからだという。
さらになぜか「豊穣の神」であるともされ、これは死を刈り取り次の生へと導く役割が「死神」としての役割に共通するためだとされた。
(よくわかんにゃい)
女神転生シリーズにおいて
初登場は『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1997年)』。
種族は”死神”。
鹿の頭蓋骨に乗って角をつかむ、牛の角が生えた赤い鬼のようなデザイン。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ネルガル
ネルガルは『メソポタミア神話』に登場する”戦争”や”死”、”疫病”を司る冥界の神。
※メソポタミアは「世界四大文明」の一つであり、紀元前3500年ごろに誕生したとされた世界最古の文明。
文字や法典を生みだすなど都市文明の始まりとされ、数々の王国の興亡が繰り返されてきた。
その場所は「チグリス川」と「ユーフラテス川」の二つの大河の流域の間にあったとされ、現在のイラク、シリア北東、トルコ南東の地域一帯あたりに存在したという。
父は”嵐”や”秩序”を司り、事実上の「最高神」とされたエンリルで、母は穀物の女神・ニンリル。妻に冥界の女王・エレシュキガルをもつ。
※エンリルは最高神ではないが、神々の王権の象徴であり、神々の運命を記した天命の粘土板・「トゥプシマティ」を持っていたため事実上の「最高神」とされた。
また、太陽神・シャマシュと同じ神とされることもあって”太陽神”としての側面も持つが、この場合は「太陽」が人類にもたらす「死」や「不毛」といった”災禍(さいか)”をもたらす側面を象徴している。
(メソポタミアの人々にとって、正午や夏至の太陽は死をもたらす季節だったため)
ネルガルとエレシュキガルの神話
「天界」で神々が宴の準備をしていたある時、冥界の女王・エレシュキガルは宰相・ナムタルを「天界」に遣わした。
使者であるナムタルを迎えた神々だったが、ネルガルだけが彼に敬意を示さなかった。
その態度を聞いたエレシュキガルは激怒し、ネルガルを「冥界」に連れてくるよう命じて殺そうと画策する。
しかし逆にネルガルがエレシュキガルを暴力で屈服させたため、エレシュキガルは冥界の主権を渡す代わりに妻となることを提案。
ネルガルはその提案を受け入れてエレシュキガルを妻にし、冥界の王となった。
「別の説」ではふたりが恋に落ちて結婚したというラブコメ説もある。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生デビルサマナー(1995年)』。
種族は”魔王”だった。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ヘル
ヘルは『北欧神話』に登場する冥界の女王。
※「北欧」はヨーロッパ北部地方のこと。
・「 デンマーク」
・「スウェーデン」
・「ノルウェー」
・「フィンランド」
・「アイスランド」
の5か国をさすことが多い
父は悪神・ロキ、母は”巨人族”のアングルボザ。
巨狼・フェンリルと世界蛇・ヨルムンガンドとは兄妹関係であり、長女にあたる。
その姿の半身は腐敗して青く、半身は人肌の色をした人間のような姿だとされ、これは彼女の体の半分が生きていてもう半分が死んでいるということを意味している。
ちなみに名前のヘルは「冥界」や「地獄」を意味する英語の「HELL」の由来ともいわれている。
概要
生まれたばかりの彼女はその醜さからオーディンによって兄妹もろとも「ニブルヘイム」へと追放された。
※「ニブルヘイム」は『北欧神話』の9つの世界の最下層に存在する永久凍土の地
そこで彼女は「死者たちの魂」を管理する役目をオーディンによって与えられ、やがて「冥界の女王」となる。
ちなみに『北欧神話』においては彼女だけが”死者を生者に戻す力”と権限を持っており、たとえ神々であっても彼女の許しと能力がなければ復活することはできない。
また「ラグナロク(神々の死と滅亡の運命)」が起こった際には「ナグルファル」という船に大量の死者たちを満載して「アースガルズ」に乗り込み、父・ロキと”巨人族”に加勢して神々と死闘を演じたといわれている。
※「アースガルズ」は『北欧神話』の神々による王国。
※「ラグナロク」は『北欧神話』における最終戦争のこと。
『北欧神話』の神々と”巨人族”たちが戦いを起こし、最終的に世界は滅亡し、多くの神々が亡くなった。
「神々の黄昏」とも呼ばれる。
しかし「ラグナロク」が終わった後で彼女がどうなったのかは分からず、戦死したとも「冥界」に残って生き続けたともされ、末路は不明。
女神転生シリーズにおいて
初登場は、原作小説である『デジタル・デビル・ストーリー(1987年)』から4年後の物語になる続編『新デジタル・デビル・ストーリー(1991年)』。
実はかなりの古参悪魔。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
ペルセポネー
ペルセポネーは『ギリシア(ギリシャ)神話』に登場する「冥界の女王」で、冥界の王・ハデスの妻。
父は主神・ゼウス。母は豊穣神・デメテル。
ゼウスが姉であるデメテルと無理やり関係を迫ったことで生まれた娘であり、デメテルとしては望んではいない子供だったが、彼女に溺愛された。
そのため本来ハデスとは従妹の関係。
元々はコレー(”乙女”という意味)と言う名前の女神で、母と同じく大地に豊穣を与える”春の女神”(花を咲かせたりする)。
しかもアテナとアルテミス同様に「永遠の処女」であることを誓っていた処女神であったという。
ハデスと無理やり結婚させられたことで「冥界の女王」となり、「冥界の女王」となってからは「死者の赦免(しゃめん ※罪を許すこと)」や「減刑」などの役目も果たすようになった。
ペルセポネーの簒奪
ある日、友人たちと草原で花々を摘んでいたところ、突然ペルセポネーの目の前で大地が裂け、そこから現れたハデスによって「冥界」へと連れ去られてしまう。
そのことに気付いた母・デメテルは、娘を返すまで「豊穣神」としての役目を放棄すると言い、そのせいで日照りが続いて大地は枯れ果ててしまった。
そのことに困り果てたゼウスはペルセポネーを地上へと帰還させたが、地上への帰還の道中でハデスに渡された「冥界のザクロ」をペルセポネが食してしまったことを「冥界の者」に明るみにされる。
掟では「冥界の食物」を食べたものは「冥界の住民」となる定めがあり、そのことを告発されたペルセポネーは「冥界の住人」となったうえに、強制的にハデスの妻となることに決定されてしまう。
だがその汚いやり口に対してデメテルのみならず他の神々も抗議したため、交渉の末ペルセポネーは一年の1/3を「冥界」で過ごし、残りの2/3は「地上」で過ごせるようになった。
最初はこのような強制的な形の結婚を毛嫌いしていたが、「冥界」におけるハデスの真面目で優しく紳士的な性格に惹かれ、次第に夫婦仲は円満になっていったという。
そしてハデスよりペルセポネーという名前を与えられると、妻となってからは自らペルセポネーと名乗るようになったという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1999年)』で、種族は死神。
『神話』における”豊穣の処女神”であった一面と”冥界の女王”という二面性を反映して、左右真っ二つに引き裂かれた女性のデザインをしている。
シリーズではあまり登場せず、次に登場したのは『真・女神転生 STRANGE JOURNEY(2009年)』。
©ATLUS ©SEGA All rights reserved.
コメント