モト
正式名称はモート。
『ウガリット神話』において「死」と「不毛」を司る神であり、「冥界」を統べる王。
※「ウガリット」は現在の「シリア・アラブ共和国」西部の都市「ラス・シャムラ」にあった古代都市国家。
モトは「死」によって生命に安らぎを与える神であると考えられており、「熱風」と「猛暑」によって「大地」を干上がらせて「植物」を枯らせるなど、「作物が実らない大地」に次の「生命」を養えるだけの力を授ける「植物神」として崇拝されていたという。
また、「乾季(1年のうちで,雨の少ない時期または季節)」を象徴する神であり、季節の移り変わりによってもたらされる”創造”と”破壊”のうち、”破壊”の側を担う。
最高神エルが父、女神アシェラトが母。
兄妹には、『ウガリット神話』の主神バアル、海神ヤム、愛と戦いの女神アナトがいる。
「雨季」の象徴であり、自然に恵みをもたらす豊穣伸バアルとは肉親でありながら相容れない「宿敵」。
その肉体は「冥界」そのものであり、口は天から地までの間を覆うとされ、この世のどんなものでもその口から逃れる事はできないという。
しかも、主神であるバアルですら永久に消滅させることはできず、死んでもなお復活する。
バアルとの闘い
自らを認めず、驕り高ぶったバアルと反発していたモト。
そこでモトはバアルを陰謀に陥れ、巨大な口で飲み込んで「冥界」へと縛り付けた。
すると瞬く間に雨が降らなくなり、大地は干上がって植物は育たなくなってしまった。
その異変に気付いたバアルの妻であり、モトの妹でもあるアナトは、バアルの身柄を返すよう求めてきたので、モトは正直にバアルを飲み込んだことを話す。
しかしその事実を知ったアナトは豹変し、モトの体は粉微塵に切り刻まれ、最終的に大地に撒かれるといった「壮絶な復讐」を果たされる。
アナトの勝利によってバアルは「冥界」から地上へと戻れたが、その七年後にはモトも甦り、再びバアルに戦いを挑むことに。
そして両者は激しく争いあうが、勝負は相討ちに終わる。
やがて、その「不毛な争い」を見たモトの妻である太陽の女神シャプシュは、夫に無駄な争いをやめるよう訴えた。
モトは妻の訴えを受け入れ、バアルが神々の王であることを認めて「王権」を譲ったという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生デビルサマナー(1995年)』。
基本的に種族は”死神”であるが、”魔王”の場合もある。
また、登場する種族において最上位の悪魔であることが多い。
シリーズには頻繁に登場し、主に万能属性と呪殺スキルを所持した魔法悪魔として活躍する。
『真・女神転生Ⅲ(2003年)』では終盤のボスとして登場。
行動回数を増加させる「獣の眼光」を使用した後、「マカカジャ」で攻撃力を上げて「メギドラオン」を連発し、プレイヤーを一方的に虐殺してくる通称”モト劇場”として有名。
モトの関連動画
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タナトス
タナトスは、『ギリシア(ギリシャ)神話』に登場する冥界の王・ハデスに従う死神。
夜の神・ニュクスの息子。
眠りの神・ヒュプノスとは双子の兄弟で、兄にあたる。
ヒュプノスが「生者」に永遠の眠りを与え、「眠った生者の魂」をタナトスが抜き取って「冥界」へと運び、「冥界の住民」とするのが役目であるとされる。
ただし、「英雄」を運ぶのは”オリュンポス十二神”の一柱であるヘルメスが担当しており、タナトスが運ぶのは「凡人」と「罪人」のみである。
(「英雄」は星座にして記録するため、「冥界」に連れていかれることはない。)
柔和で優しいヒュプノスに対して、タナトスは「鉄の心臓」と「青銅の心」を持つ非情な神とされており、人間にとっても神々にとっても忌むべき者とされる。
『ギリシア(ギリシャ)神話』において英雄や神々によって死んだ者の魂を運ぶことを邪魔されることが多く、ギリシア(ギリシャ)悲劇『アルケスティス』が有名。
悲劇『アルケスティス』
内容は簡単に言うと、死期が迫った人間の王・アドメトスがアポロの好意によって身代わりを出せば命が助かることとなり、なんやかんやあって最終的に妻であるアルケスティスが身代わりとなって死ぬ。
そこで、タナトスが魂を運ぼうとすると、ヘラクレスが邪魔して彼女を救い出すというもの。
女神転生シリーズにおいて
『真・女神転生 デビルサマナー(1995年)』で初登場。
『ペルソナ3』では主人公の固有ぺルソナとして登場する。
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オルクス
オルクスは、「古代ローマ(紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろ)」に信仰されていた”死”をもたらす神。
「誓いを破った者」や、「悪人」を死後に苦しめる神で、おもに農村部で崇拝された。
また、名前には「冥府」そのものを指す呼び名としても使われており、プルートー(『ギリシア(ギリシャ)神話』の冥界神・ハデスが『ローマ神話』に取り入れられたもの)と同一視されていくようになったという。
他にも、敵兵を殺害しては貪り食うといわれている豚顔の邪神・オーカスがいるのだが、これはオルクスが零落(れいらく ※衰退したり、落ちぶれること)した姿だとされている。
その姿は「髭を生やした巨大で恐ろしい男」として、「古代ローマ」の壁画などに描かれていた。
ちなみにイタリアの町「ボマルツォ」で有名な怪物庭園「地獄の口」は、オルクスを表しているとされている。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生 STRANGE JOURNEY(2017年)』。
魔王オーカスの真の姿であったと思わせる設定で登場し、 オーカスとヘルによる特殊合体で仲魔にすることができる。
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イシュタム
イシュタムは『マヤ神話』における”自殺”を司る神で、選ばれた人間の魂を「楽園」に導くとされている。
※「マヤ」は、メキシコの南東部でかつて栄えた文明。
その姿は両目を閉じ、顔面が腐敗した首を吊った女性として『ドレスデン絵文書(13世紀から14世紀のものとされるマヤの書物)』で描かれている。
誰でも「楽園」に連れて行くわけではなく、「聖職者」や「いけにえの犠牲者」、「戦死者」、そして「首つりをした者」のみを「楽園」へと導くという。
楽園は「ヤシュチェ」という「宇宙樹(うちゅうじゅ)」の木陰にある心地良い場所であるとされ、「極上の食べ物」と「飲み物」を堪能でき、人々はあらゆる苦しみから解放されて暮らすとされる。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生 デビルサマナー(1995年)』。
種族”死神”として登場。
実は『ドレスデン絵文書』で描かれた首つり状態のイラストも存在したが、自主規制により現在の長髪で顔を隠し、手に首吊りのロープを持った女性の姿になったという。
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ゲーデ
ゲーデは「ブードゥー教」における”死”と”セックス”を司る精霊。
「生物」を養って増やしたり、「死者」を生き返らせるとされる。
※「ブードゥー教」はカリブ海の島国「ハイチ」で主に信仰されている「民間信仰」。
「ハイチ」の推定人口は1,140万人程度とされるが、国民の約2人に1人が「ブードゥー教」を信仰しているほど浸透している。
また、「ブードゥー教」において「死んだ人間」は神々の住む土地「ギネー」に行くための長い道を「魂」となって進むとされ、その途中にある「永遠の交差点」でゲーデは「魂」たちを見張っているという。
その姿は、破れた「黒い山高帽(やまたかぼう)」とボロボロの「黒い燕尾服(えんびふく)」を身に着けた男性。
性格は非常に陽気で、「生きてきた全ての人間」の誰よりも賢いとされるが、ひどく「下品な態度」や「言葉遣い」で話す。ちなみに大好物は「葉巻」と「酒」。
さらに「生きた人間」に憑依しては「当人」やその「知人」の秘密を暴露させ、慌てる姿を「娯楽」とする厄介な一面をもつ。
そんなゲーデだが、「ブードゥー信者」にとっては「死者」を守護するものとして大変信仰されており、「ブードゥー信者」の墓石にはゲーデに関する名が数多く刻まれている。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1997年)』
ソウルハッカーズでは「陽気」な性格ではなく、紳士的。
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ヘル
ヘルは『北欧神話』に登場する冥界の女王。
その名は、「冥界」・「地獄」を意味する英語の「HELL」の由来ともいわれている。
父は悪神であるロキ、母は巨人族のアングルボザ。
巨狼・フェンリルと世界蛇・ヨルムンガンドとは兄妹関係で、長女にあたる。
半身は腐敗して青く、半身は人肌の色をした姿だといわれ、これは彼女の体の半分が生きていて、もう半分が死んでいるということを意味している。
概要
生まれたばかりの彼女はその醜さゆえ、オーディンによって兄妹もろとも『北欧神話』の9つの世界の最下層に存在する永久凍土の地「ニブルヘイム」へと追放された。
そこで彼女は「死者たちの魂」を管理する役目をオーディンによって与えられ、「冥界の女王」となる。
『北欧神話』においては、彼女だけが”死者を生者に戻す力”と権限を持っており、たとえ神々であっても、彼女の許しと能力がなければ復活することはできない。
「ラグナロク(神々の死と滅亡の運命)」が起こった際には、「ナグルファル」という船に死者たちをこれでもかと満載して「アースガルズ」に乗り込み、巨人族に加勢して神々と死闘を演じたといわれている。
※「アースガルズ」は『北欧神話』の神々による王国。
しかし「ラグナロク」が終わった後で彼女がどうなったのかは分からず、戦死したとも「冥界」に残って生き続けたともされ、末路は不明である。
女神転生シリーズにおいて
初登場は、原作小説である『デジタル・デビル・ストーリー(1987年)』から4年後の物語になる続編『新デジタル・デビル・ストーリー(1991年)』。
実はかなりの古参悪魔。
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ペルセポネー
ペルセポネーは『ギリシア(ギリシャ)神話』に登場する「冥界の女王」で、冥界の王・ハデスの妻。
父は主神・ゼウス。母は豊穣神・デメテル。
ゼウスが、姉であるデメテルと無理やり関係を迫ったことで生まれた娘ではあるが、デメテルに溺愛されている。
元々は、花を咲かせたりと、大地に豊穣を与える”春の女神”。
「冥界の女王」となってからは、死者の赦免(しゃめん ※罪を許すこと)や減刑なども果たすようになった。
本来はアテナとアルテミス同様に永遠の処女であることを誓っていた処女神であったという。
ちなみに「冥界」へと行く前の名前はコレー(”乙女”という意味)と言い、「冥界」へと入った後、ハデスよりペルセポネーという名前を与えられた。
(名前が気にいったらしく、妻となってからは自分からペルセポネーと名乗る。)
ペルセポネーの簒奪
ある日、友人たちと草原で花々を摘んでいたところ、突然ペルセポネーの目の前で大地が裂け、そこから現れたハデスによって「冥界」へと連れ去られてしまう。
そのことに気付いた母・デメテルは、娘を返すまで「豊穣神」としての役目を放棄すると言い、そのせいで日照りが続いて大地は枯れ果ててしまった。
そのことに困り果てたゼウスはペルセポネーを地上へと帰還させたが、地上への帰還の道中にハデスに渡された「冥界のザクロ」をペルセポネが食してしまったことを「冥界の者」に明るみにされる。
掟では、「冥界の食物」を食べたものは「冥界の住民」となる定めがあり、そのことを告発されたペルセポネーは「冥界の住人」となったうえに、強制的にハデスの妻となることに決定されてしまう。
だが、その汚いやり口に対し、デメテルのみならず他の神々も抗議したため、交渉の末ペルセポネーは一年の1/3を「冥界」で過ごし、残りの2/3は「地上」で過ごせるようになった。
最初はこのような強制的な形の結婚を毛嫌いしていたが、「冥界」におけるハデスの真面目で優しく、紳士的な性格に惹かれ、次第に夫婦仲は円満になっていったという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1999年)』で、種族は死神。
神話における、豊穣の処女神であった一面と、冥界の女王という二面性を反映してか、左右真っ二つに引き裂かれた女性のデザインをしている。
シリーズではあまり登場せず、次に登場したのは『真・女神転生 STRANGE JOURNEY(2009年)』。
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