トール
トールは『北欧神話』の”雷”と”戦”の神。
父は最高神オーディン、母は大地の化身とされる女神ヨルズで、「アース神族最強の戦士」とされた。
※「アース神族」はオーディンを長とする『北欧神話』の神々の系統。
外見は”燃えるような目”と”赤髪(あかがみ)”と”赤髭(あかひげ)”を持つ大男。
無双の「怪力」を誇り、『北欧神話』最強の武器・ミョルニルで数々の敵を討ち果たしたという。
性格は「豪快」で、「武勇」を重んじる真面目な人物だが、その一方で「短気」で「乱暴者」という面もあり、騙されやすいので「知略」による戦いには不向きだったという。
そのせいか、ずる賢くて悪戯好きのロキとは妙にウマが合い、ふたりでつるむことが多かった。
また、途方もない「大食漢(たいしょくかん)」で、牛を丸ごと飲み込むなどのエピソードがある。
『北欧神話』最強の武器・ミョルニル
トールの愛用していた鉄槌「ミョルニル」は、どんな「怪力」で打ちつけても壊れず、投げれば必ず「標的」を外さずに当たっては自身の手に戻ってくるという。
また、自在に大きさを変えることが可能で、巨大な敵には大きくして戦ったり、持ち運ぶときには小さくして携行していた。
その威力は凄まじく、一撃で死亡しなかった生物は世界蛇・ヨルムンガンド( ロキ の息子)のみで、『北欧神話』最強の武器と言われた。
しかし”柄が短く真っ赤に焼けている”という欠点があり、これを扱うためには「ヤールングレイプル」という鉄製の手袋が必要である。
「ラグナロク」での戦いと「信仰」
神々の最終戦争「ラグナロク」では世界蛇・ヨルムンガンド( ロキ の息子)と戦うことになり、「ミョルニル」で殴りつけて討ち果たすが、ヨルムンガンドの”神々をも殺す毒”を喰らってしまい、その生涯を終えた。
また時代が変化する中で、”雷”と”戦”の神だけではなく、”農耕の神”として、農民を中心に崇拝されていったという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生(1992年)』。種族は”魔神”。
アメリカ合衆国の大使トールマンに扮し登場し、東京にICBM(大陸間弾道ミサイル)を落とした張本人。この出来事は後にメガテンシリーズにおいて重要な分岐点となる。
『真・女神転生Ⅲ(2003年)』では種族”鬼神”として登場。
ゴズテンノウが治めるマントラ軍に所属していて、マントラ軍の流儀による決闘裁判で主人公を試す。
マントラ軍が崩壊した後は、ゴズテンノウの力を継承した橘千晶(たちばな ちあき)が掲げる「ヨスガ」の賛同者となり、ヨスガの気高き強者として再度戦うことになる。
電撃属性のスキルと高い力ステータスで活躍し、見た目や知名度からも人気な悪魔の一体。
MARVEL作品にも登場している。
トールの解説動画
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マリシテン
摩利支天(マリシテン)。
見ることも触れることもできない「陽炎(かげろう)」を神格化したとされる「仏教」の守護神。
※「仏教(ぶっきょう)」はインド発祥の宗教で、「世界三大宗教」の1つ。信者数は世界人口の7%である5億2000万人以上と、世界で4番目に大きな宗教。
人口だけでみると「ヒンドゥー教」が世界で3番目に大きい宗教なのだが、「仏教」のほうが歴史が長いので「世界三大宗教」のひとつとなっているらしい。
また、梵天(ブラフマー)の子、または日天(スーリャ)の妃(きさき ※嫁)ともいわれている。
一般的には「3つの顔」、「6本あるいは8本の腕」を持ち、「金剛杵(こんごうしょ)」や「剣」、「針」、「矢」といった様々な武器を手にしてた「天女(てんにょ)」の姿で表されることが多い。
※「金剛杵(こんごうしょ)」は煩悩(ぼんのう)を打ち破る象徴として用いる金属製の法具。
加えて「蓮(はす)」に腰掛けたり、「猪(いのしし)」に乗った姿で描かれることが多い。
元々は「インド」でマリーチーと呼ばれる神であり、さらに起源を辿ると古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』に登場するウシャスという「暁の女神」であるという。
「仏教」に取り入れられたことにより摩利支天(マリシテン)という名になった。
能力とご利益
日天(スーリャ)の妃(きさき)となる前は、彼に付き従い、常にその前を疾行して守護していた付き人とされる。
その能力は
・「俊足(しゅんそく)」
・「焼けない」
・「濡れない」
・「傷付かない」
・「目立たない」
という特性を持ち、自在の「神通力(じんつうりき)」を用いて「仏敵(ぶってき)」を発見しては切り込んでいったという。
「日本」では「武士」たちによって信奉されていて、マリシテンの”実体”がないという特性から
”あらゆる害から身を守り、悟られずに敵を襲うことができる”
御利益があるとされ
・武芸守護(ぶげいしゅご)
・戦勝祈願(せんしょうきがん)
として信仰されていた。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生 デビルサマナー(1995年)』。種族は”鬼神”。
”鬼神”種族の中でも高レベルで、強さも美しさも兼ね備えた悪魔として登場する。
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ヒノカグツチ
正式名称は火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)。
『日本神話』における”火”を司る天津神(あまつかみ)で、多くの神を生みだしたイザナギ・イザナミから産み出された”最後の神”。
燃え盛る姿で産まれたのだが、そのせいでイザナミの陰部(産道)に火傷ができ、のたうち回って苦しんだ後に母・イザナミは死んでしまう。
故意ではないが、妻を殺された怒りからイザナギは「十拳剣(とつかのつるぎ)」である「天之尾羽張(アメノオハバリ)」でヒノカグツチの首を落として殺害する。
※「十拳剣(とつかのつるぎ)」は『日本神話』に登場する剣。色々種類がある。
そして、その「首」から滴り落ちた「血」からは様々な神が生み出されたという。
(有名どころでは、タケミカヅチやフツヌシなど)
「親殺し」をし、「子殺し」をさせてしまった、”悲運の神様”。
こんなことをしでかしているのだが、”火”を司る神様なので火事を抑える役割として「火難除け」や「防火の神」として祀られている。
また、”火”を扱う業者からの「崇敬(すうけい ※うやまわれているということ)」が高く、「鍛冶業(かじぎょう)」や「焼き物業」といった業者から高く崇敬された。
女神転生シリーズにおいて
初登場はメガテンの原点である小説・『デジタル・デビル・ストーリー(1986年)』。主人公・中島朱実(なかじま あけみ)の持つ剣として登場する。
悪魔(仲魔)としても複数の作品に登場しているが、レベルは低く、印象は薄い。
どちらかというとメガテンシリーズに登場する最強の武器である「ヒノカグツチの剣」として大きな存在感がある。
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フツヌシ
経津主神(フツヌシ)。
『日本書紀』に登場する”刀剣(とうけん)”の神で、「剣の神」と崇められる天津神(あまつかみ)の一柱。
タケミカヅチと同一視される説もある。
フツヌシという名は、物が断ち切られるさまを表す「フツ」と、神であることを表す「ヌシ」から成っているとされ、この名の意味から”刀剣(とうけん)”の威力を象徴する神であるともされている。
フツヌシの誕生・説
多くの神の父であるイザナギの妻・イザナミが、火の神・加具土命(カグツチ)を出産した際に火傷ができてしまい、これがもとでイザナミは死んでしまった。
そのことに怒ったイザナギは、十拳剣(とつかのつるぎ)を用いて息子である加具土命(カグツチ)を惨殺する。
※「十拳剣(とつかのつるぎ)」は『日本神話』に登場する剣。色々種類がある。
そして、その時に剣から滴り落ちた「血液」から生まれた岩の子がフツヌシであるとされる。
後に、「創造」を神格化した神・高皇産霊尊(タカビムスビノミコト)によって命じられ、葦原中つ国(あしはらなかつくに ※下界のこと)を平定したとされた。
(この平定した説がタケミカヅチと一緒のため、同じ神様なんじゃないかといわれている。)
また、千葉県香取市(ちばけんかとりし)にある「香取神宮(かとりじんぐう)」の祭神(さいしん)であることから
・「香取神(かとりじん)」
・「香取大明神(かとりだいみょうじん)」
・「香取(かとり)さま」
などとも呼ばれる。
女神転生シリーズにおいて
『デビルサマナー ソウルハッカーズ(1997年)』で、種族”鬼神”として初登場。
デザインは一貫して画像のままで、武士口調で話す。
フツヌシの関連動画
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スクナヒコナ
『日本神話』に登場する少名毘古那神(すくなびこなのかみ)。
”医薬”・”酒”・”温泉”などに関わることから「酒造りの神」や、「温泉の神」としての側面を持つ。
その姿はとても小柄だが、豊かな「知識」や「技術」を備えており、「腕力」ではなく持ち前の「知識力」で様々な「困難」を見事に克服していったという。
『古事記』では神産巣日神(かみむすびのかみ)の子とされ、表記名は「少名毘古那神(すくなびこなのかみ)」。
『日本書紀』では高皇産霊神(たかみむすびのかみ)の子とされ、表記名は「少彦名命(すくなひこなのみこと)」とされ
それぞれ「父親」や「表記名」が違い、さらには”扱い”も若干異なる。
また、「一寸法師」や「コロポックル」などのルーツとされている。
『古事記』において
『古事記』によればスクナヒコナは鵝(ヒムシ=ガのこと)の皮の着物を着た小柄な神で、オオクニヌシの国造りに際し、天乃羅摩船(アメノカガミノフネ=雑草の船)に乗って波の彼方より来訪する。
父である神産巣日神(かみむすびのかみ)の命によって義兄弟の関係となって国造りに参加し、二神は協力し合って国を造り固め、その後スクナヒコナは常世の国(不老不死の国、死者のいる国、海の向こうにある進んだ文化を持つ国と呼ばれる場所)に去って行ったという。
『日本書紀』において
オオクニヌシが出雲で食事をしようとすると海から声が聞こえ、その方向に目をやると、白斂(ガガイモ=雑草)の皮の舟に乗り、鷦鷯(ミソサザイ=スズメより小さい、日本でも最も小さな鳥)の衣を着た小男がやって来たという。
オオクニヌシが小男を手にとってもてあそぶと急に跳ねて頬にかじりついたので、怪しく思って天津神(あまつかみ)に連絡する。
すると高皇産霊神(たかみむすびのかみ)が「それは自分の1500柱いる子の内のひとりだが、いたずら者で、教えに従わず指の間からこぼれ落ちた子だ」と紹介。
そしてなんやかんやあって、『古事記』同様、スクナヒコナはオオクニヌシと協力し天下を治め、常世の国に去っていたという。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生Ⅱ(1994年)』で、種族は”国津神”。
『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団(2006年)』では、”怨嗟の声に呼び起こされた”おぞましい姿の国津神として、重要な悪魔として登場する。
『真・女神転生Ⅳ FINAL (2016年)』で現在のイラストとなる。
スクナヒコナの関連動画
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ショウキ
鍾 馗(ショウキ)は、「中国」の民間伝承に伝わる「悪霊」や「邪鬼」を退治する「道教(どうきょう)」系の神。
※「道教(どうきょう)」は、「中国三大宗教」の一つ。
「中国三大宗教」は
・「儒教(じゅきょう)」
・「仏教(ぶっきょう)」
・「道教(どうきょう)」
その姿は「剣」を片手で持ち、「大きな眼」と「長い髭」をたくわえ、何かを睨みつける”鬼”のような強面の「中国の官人」の姿で描かれる。
鍾馗(ショウキ)の伝説
中国の王朝である「唐(とう 618年~907年)」の六代皇帝「玄宗(げんそう 生685年~没762年)」が病床に伏せていた時、高熱のなかで夢を見る。
宮廷内に一匹の「小鬼」が忍び込み、病床に伏せた玄宗(げんそう)を横目に彼の所持品を盗み去るなど”悪戯(いたずら)”をし始めるのだった。
それに怒りを覚えた玄宗(げんそう)は警護の者を呼ぶと、どこからともなく「大鬼」が現れて、「小鬼」を難なく捕らえて食べてしまう。
玄宗(げんそう)が「大鬼」に何者かと正体を尋ねると
「自分は終南県(しゅうなんけん)出身の鍾馗(ショウキ)と申します。」
「武徳年間(618年~626年)に官吏(中国の官僚)になるため科挙(中国の官僚登用試験)を受験しましたが落第し、そのことを恥じて宮中(きゅうちゅう)で自殺しました。」
「しかし「高祖皇帝(こうそこうてい ※唐の初代皇帝)」は自分を手厚く葬ってくれたので、その”恩”に報いるために参りました」
と告げる。
そして夢から覚めた玄宗(げんそう)は、不思議なことに「病気」が治っていた。
そこで玄宗(げんそう)は夢の中のショウキを著名な画家に描かせて、毎年の新年にショウキの絵を門に貼って「邪気除け(じゃきよけ)」とした。
以来「中国」ではこの風習が生まれ、近年まで続いているという。
日本では、京都を中心にその風習が広まり、「魔除け」・「厄除け」や「学業成就」に効果があるとされている。
また一部ではあるが、「端午の節句(たんごのせっく)」にショウキの絵や人形を「奉納」したりする「風習」が「現代」でも一定の地域で残っている。
女神転生シリーズにおいて
メガテンシリーズでは物理アタッカーとして登場。
スマホ用ゲーム『D×2 真・女神転生 リベレーション』の初期段階では、合体産で作成できる悪魔の中でもトップクラスに強い仲魔として活躍していた。
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ナガスネヒコ
長髄彦(ナガスネヒコ)。
彼は「神武天皇(じんむてんのう ※初代天皇とされる)」が軍を用いて東を平定しようとした際に対抗した「大和の国(やまとのくに)」の「土豪(どごう)」である。
※「大和の国(やまとのくに)」は現在でいう「近畿地方」の中央やや南寄りにあった国(地方)。神武天皇(じんむてんのう)側からみると”東”にあった。
※「土豪(どごう)」はある地方において「土地」や「財産」に「私兵」を持ち、一定の地域的支配権を持つ”一族”のこと。
兄に「安日彦(アビヒコ)」。
妹に「登美夜毘売(トミヤビメ)」がいて、妹は「饒速日命(ニギハヤヒ)」という者と結婚しており、子供を設けていた。
「神武天皇(じんむてんのう)」の軍を一度は退け、「神武天皇(じんむてんのう)」の兄・「五瀬命(イツセノミコト)」を矢によって死亡させた。
しかし、「神武天皇(じんむてんのう)」は軍を再度出陣。
最期まで「神武天皇(じんむてんのう)」に対抗したが、妹の旦那である「饒速日命(ニギハヤヒ)」に裏切られて敗北し、亡くなる。
女神転生シリーズにおいて
初登場は『真・女神転生(1992年)』で種族は”鬼神”。
『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団(2006年)』では、兄と共に強敵ボスとして登場する。
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